県労連機関紙

友好団体高知県労連の情宣

9月機関紙

暮らし続けられる賃金を求めてー高知県の最低賃金と全国的課題ー

・最新の最低賃金水準

 令和7年(2025年)12月1日から発効する高知県の最低賃金は1,023円である。
 同年度の全国加重平均額は1,121円、東京都は同年10月3日から1,226円となっている。
 この数値は、高知県が全国水準や大都市圏と依然として大きな格差を抱えている現実を示している。

・高齢者の実態と最低賃金

 8月4日に開かれた高知地方最低賃金審議会において、県労連の代表が意見陳述を行った。
 年金受給者の生活実態として、多くの高齢者が「もう働かなくてもよい老後」を実現できず、最低賃金水準に近い非正規・短時間労働に従事せざるを得ない状況が報告された。週20時間の労働で月収はおよそ5万円程度にとどまり、物価高騰が重なり生活がより厳しくなっている事実が浮き彫りとなった。

・人口流出と外国人労働者の確保

 県労連の牧書記長は、最低賃金格差が働き手の確保や人口移動に影響を与えていることをデータで提示した。
 外国人労働者比率を見ると、高知県を含む四国・山陰各県は0.2~0.3%にとどまる一方、隣接する賃金水準の高い県に人材が流出している。日本人においても、最低賃金の高いA・Bランク地域への移住が増加しており、2024年には高知県からBランク地域へ移動した人数が前年比でほぼ倍増している。
 最低賃金の地域格差が労働力確保の阻害要因となっていることは明白である。

・支援策の有無と高知県の課題

 国は最低賃金引き上げに伴う事業者支援として「業務改善助成金」を設けている。四国では徳島県や愛媛県が独自に上乗せ制度を実施し、香川県高松市では奨励金制度を導入している。
 しかし、高知県だけが独自の支援策を持たず、助成金申請件数も前年を下回っている。この姿勢が事業者の賃上げをためらわせる大きな要因となっている。

・考察と期待

 高知県の最低賃金は全国平均を大きく下回り、東京都との差は200円を超えている。
 この格差は単なる数値の違いではなく、労働力確保の難しさや人口流出、高齢者の困窮という深刻な社会問題を引き起こしている。
 また、賃上げを後押しする支援策が県独自に存在しないことは、地域経済の発展を阻害する要因となっている。

 最低賃金の引き上げは、労働者の生活安定と地域の持続可能性を確保するために不可欠である。特に高知県のような地方圏においては、単なる賃金改定にとどまらず、事業者への具体的な支援策と一体で進める必要がある。
 暮らし続けられる賃金として「最低1,500円」という声は、もはや夢物語ではなく現実的な社会的要請である。県と国が協力し、生活者と事業者双方が安心できる仕組みを構築することが期待される。

8月機関紙

「誰が未来を変えるのか――今、主権者としての私たちへ」

 2025年7月20日――その日、日本の政治地図が静かに、しかし確かに塗り替えられた。第27回参議院選挙で、自公政権が過半数を割り込み、長らく続いてきた「数の力」の支配が大きく揺らいだ。高知・徳島合区では、無所属「県民党」を貫いた広田一氏が圧倒的な支持を受け、通算4期目の当選を果たした。組織の後ろ盾を持たず、地に足をつけた訴えが人々の心に届いたということだ。

 なぜ、今この変化が起きたのか? それは、「まっとうな政治を求める声」が、もはや声のままに終わらせられなかったからだ。物価高にあえぎ、減税を求めても届かず、裏金問題や旧統一教会との関係に憤っても、政府は耳を貸さなかった。「誰も私たちを見ていない」――そう感じた有権者の想いが、静かな怒りとなって投票行動を突き動かした。

 この選挙では、新興政党の台頭が目立った。議席ゼロから14議席を獲得した参政党、保守党、チームみらい。彼らは、従来の政党が届かなかった層――若者や、政治に希望を失っていた人々――の心を捉えた。SNSを駆使し、既成政党では見落とされがちだった日常の「不安」や「違和感」を、彼らは言葉にした。投票率が3年前より7.8ポイントも上昇したのは、まさにその結果である。

 だが同時に、私たちは問わねばならない。新たに現れた声は、すべてが希望を語るものなのか。世界を見渡せば、排外主義や極端なナショナリズムを掲げる政党が台頭し、分断と憎悪が社会を覆っている。弱い者を切り捨て、「敵」を作って結束を図る言葉に、私たちは決して惑わされてはならない。

 だからこそ今、必要なのは「見極める力」である。何を言っているのかだけでなく、「誰が、なぜ、どのように」その言葉を語っているのか。情報の真偽を見抜き、科学的根拠に基づく冷静な判断を持とう。SNSに溢れる短絡的な言葉ではなく、現場の声、生活の実感、そして歴史の文脈を踏まえた情報に耳を澄ませよう。

 政治は、私たちの鏡だ。失望し、あきらめたとき、そこに映るのは「無関心」という沈黙の暴力である。だが、行動したとき、語り合ったとき、選んだとき、政治は変わる。そして、今回の選挙結果は、その確かな証明である。

 私たちは知った。何かを変える力は、決して遠くの誰かにあるのではなく、ここにいる「私たち自身」にあるのだと。働く者が声を上げ、生活者としての怒りと願いを携えて一票を投じるとき、政治は動く。

 これからが本番だ。選挙は終わっても、私たちの暮らしは続く。どの政党も、どの候補も、私たちの期待を裏切ることは許されない。問い続けよう。「その政策は誰のためか?」「その決定は、何を守るためか?」

 嘘に騙されない目を持とう。希望を手放さない心を持とう。そして、未来に責任を持つ者として、今日も働き、生きる私たちの誇りを胸に――声をあげ、つながり、歩んでいこう。