県労連機関紙

友好団体高知県労連の情宣

11月機関紙

対話が広げる未来――レバカレ2025に見た新しい労働運動

1.全国から700人が集結、学びと交流の三日間

 2025年10月11日から13日にかけて、全国の労働組合員や関係者およそ700人が集まり、「レイバー・ユニオン・カレッジ(通称レバカレ)」が開催された。

 全労連をはじめ多くの組織が協力し、職種や産業の違いを越えて「対話と学び合い」を深める三日間となった。

 高知県からは高知県労連(高知県労働組合連合会)の仲間4名が参加し、全国の経験と理論を共有した。今回のレバカレは、単なる研修や報告の場ではなく、参加者一人ひとりが現場の課題を持ち寄り、語り合い、次の行動を見つける実践の場として大きな意義を持った。

2.岡上委員長が見た“声をつなぐ力”

 全体会では、「労働組合は魔法である」という印象的な言葉が語られた。人と人をつなぎ、社会を少しずつ動かす組合の力を象徴している。
 一方で、岡上則子・高知県労連委員長は、多くの労働者が自らの権利を奪われたまま沈黙している現実に目を向けた。自由な発言や行動が制限される今、健全な労使関係を築き、誰もが声を上げられる社会を取り戻すことが急務である。

 岡上委員長は、職場の取り組みとして、組合員の学習や活動を支える「組合活動希望休暇」制度を紹介した。また、管理職にも組合活動の意義を理解してもらう工夫を進めているという。

 さらに、学習会の参加者数やアンケート結果を数値化して分析するなど、成果を“見える化”して次につなげる取り組みも報告された。こうした実践が、組合活動をより開かれたものにし、職場全体の理解を広げる礎となっている。

3.牧書記長が学んだ“支え合うリーダーシップ”

 もう一つ、高知から注目すべき報告があった。牧耕生・高知県労連書記長が参加した「手法から考える労働運動」分科会である。テーマは「コーチング」――仲間の中にある答えを引き出すための対話の技法である。

 牧書記長は、観察・診断・介入・共有・振り返りという5つの段階を学び、「教える」よりも「気づかせる」支援が組織を強くすることを実感したという。

 また、アメリカの労働運動研究団体レイバーノーツのエレン・D・フリードマン氏が講演し、「オルガナイザー(組織者)」の4つの役割を提示した。
 ①労働者が自らの立場を理解する手助けをする。
 ②正規・非正規などの分断を越えて連帯をつくる。
 ③報復や不安を乗り越える支えとなる。
 ④行動を振り返り、次の一歩へつなげる。
 これらの視点は、国内の職場でもそのまま通じるものであり、現場のリーダー像を再考するきっかけとなった。

4.“やらねばならない”から“やってみたい”へ

 牧書記長は報告の中で、「やらなければならない運動」から「やってみたい運動」へと発想を転換する必要性を語った。義務や抵抗から始まる運動ではなく、仲間と希望を共有しながら自発的に動く運動へ――。その中心にあるのが、一人のリーダーに依存せず、全員が力を発揮する「スノーフレイクリーダーシップ」である。

 この考え方は、レバカレ全体を貫く“共に学び、共に動く”という精神と重なっており、多くの参加者に共感を呼んだ。

5.今後への期待――学び合う文化を高知から全国へ

 レバカレ2025が示したのは、労働運動の再出発には「学び」と「対話」が欠かせないという事実である。

 700人の参加者が語り合い、悩みを共有し、希望を見出す中で、「労働組合は社会を動かすことができる」という確信が育まれた。

 岡上委員長は、全国の仲間から学んだ多様な工夫を高知に持ち帰り、次代の組合員と共有していく意欲を語っている。牧書記長も、現場の組合員が自ら考え行動できる環境づくりに取り組む方針を示した。

 沈黙から声へ、孤立から連帯へ。
 学び合い、支え合う文化を高知から全国へ――。
 レバカレ2025で生まれたこの新しいうねりは、これからの労働運動に確かな希望の光をともすであろう。

10月機関紙

連帯と対話で切り拓く「人間らしく生き働く社会」への道

高知県労連第38回定期大会

 2025年9月7日、高知県労働組合連合会(県労連)は第38回定期大会を高知城ホールで開催し、代議員60名が参加した。大会では「物価高騰から生活を守る」「対話と学び合いで前進を勝ち取る」ことを主題に、各職場・地域からの切実な声が寄せられた。全体を貫く共通の基調は、「人間の尊厳を守るための労働運動を、地域とともに再構築する」という決意である。

1.生活防衛のための「4つの要求の柱」

 冒頭、執行部から提示された「4つの要求の柱」は、今後一年の運動方針を明確に方向づけた。
①大幅な賃上げと底上げを進め、労働法制改悪を許さない、
②長時間労働の是正とハラスメント根絶を進め、人権・ジェンダー平等を重視する、
③地域の「公共」を取り戻し、誰もが住み続けられる社会を実現する、
④政治に立憲主義を取り戻し、県内課題の前進を図る――。

 これらはいずれも、高知の地で働く人々が直面する生活危機と直結するものである。特に、物価高騰による実質賃金の低下が止まらない中、「生計費に基づく賃上げ」を基準とした最低生計費試算調査のアップグレードは、運動の現実的な柱となる。県労連が「必要な生計費」を数値で示すことは、労働者の生活実態を可視化し、賃金闘争を“感情論”から“根拠ある要求”へと高める挑戦である。

2.「公共」を取り戻す地域闘争へ

 もう一つの焦点は、介護・福祉分野における地域の「公共」を守る運動だ。中央社保協や全日本民医連と連携し、「介護保険制度の抜本改善と処遇改善」を求める請願署名運動を進めることが確認された。これは単なる福祉政策の改善ではなく、「地域に生きる人々の尊厳を守る」社会運動でもある。

 介護報酬の引き上げが遅れる現状では、現場職員の疲弊が深刻化し、離職の連鎖が止まらない。高知という地方において、介護や医療の人材流出は「地域の崩壊」に直結する。だからこそ、地域の声を国に届ける意見書運動や、自治体への要請行動は「地域を守る最後の砦」となる。

3.現場発言に見る労働のリアル

 代議員発言では、各産別・地域の現場実態が生々しく語られた。

 まず、嶺北労連の町田代議員は、70回目を迎えた地域メーデーのあり方を問い直した。「国道デモやシュプレヒコールは時代に合うのか」という問題提起は、運動文化の継承と革新の両立を問うものだ。コロナ禍を経て、地域行事の再構築が求められていることを示唆している。

 高知県教組の石川代議員は、教員の過酷な実態を告発した。休憩はわずか5〜7分、病休者の6割がメンタル疾患という事実は、教育現場が限界にあることを示している。教職調整額10%の引き上げを「見なし残業化」と批判し、「ゆきとどいた教育」署名運動を強化する決意を語った。

 自治労連の細川代議員は、県による消防広域化政策を「地方自治への介入」と批判。消防職員が組合を作れない現実を踏まえ、「声を上げられない労働者の代弁者」としての自治労連の使命を訴えた。

 高知一般の前田代議員は、最低賃金上昇による中小企業への影響と労働者の生活苦の板挟みを指摘。土佐食の職場で最低賃金近傍の労働者が多く、「賃上げ交渉を重ねなければ生きられない」実態を明らかにした。ここには「賃上げが進むほどに雇用が不安定化する」という矛盾が浮かぶ。

 自治労連の福岡代議員は、室戸市役所での人員不足とハラスメントを報告。「マイナポイント業務では23時まで勤務」という発言は、地方行政の限界を象徴している。組織的支援と制度改善の必要性が強く示された。

 こうち生協労組の笹岡代議員は、若手職員の主体的な組合活動が拡大の鍵になることを指摘。25人でのストライキを実施したが要求には届かず、組合員の離脱もあったという。だがその中でも「組合の存在が労使対等の緊張感を生む」との言葉には、運動の核心が込められている。

 年金者組合の畑山執行委員は、「戦争は最大の環境破壊」と喝破。現役世代への連帯を呼びかけ、選挙を通じて社会の方向を変える重要性を訴えた。

 医学連の和田代議員は、医療・介護分野での賃金低迷と人員不足を告発。「政府も医療現場の健康リスクを認めざるを得ない状況」とし、大幅増員署名を呼びかけた。医療従事者が社会を支える「最後の砦」であることを再確認させる発言だった。

 私学教組の佐々木代議員は、高知学園での人件費削減提案に抗し、「私学助成拡充」を求める署名運動を報告。少子化と経営難に苦しむ私学現場が、教育の公共性を守るために奮闘している現状を浮き彫りにした。

 最後に、自交総連の横田代議員がライドシェア問題を報告。維新が推進する法案を「タクシー労働者の生活破壊」と断じ、反対運動への支援を求めた。さくらハイヤー裁判の和解報告に感謝を述べつつ、組合員が残れなかった悔しさを滲ませた。この発言には、「公正な労働市場を守る戦いは終わっていない」という強い警鐘が込められている。

4.総括と展望 ― 連帯と希望の再構築へ

 大会全体を通じて浮かび上がったのは、「労働組合が地域社会の再生装置として再び機能し始めている」という兆しである。賃金・人権・公共・平和――これらの課題は一見ばらばらだが、根底には「人間らしく生きる権利の回復」という一本の軸が通っている。

 岡上則子執行委員長を先頭に、牧耕生書記長ら新役員体制が発足した。多様な世代と産別を束ね、県民の声を「現場の言葉」で政策に反映させる力が問われる。

 物価高、賃金低迷、長時間労働、ジェンダー格差、医療崩壊、戦争の影――。多くの課題が複雑に絡む今こそ、「対話と学び合い」が組織の生命線となるだろう。

 現場の声を束ねるこの大会は、単なる定期行事ではない。そこには、働く者一人ひとりが社会を変える主体として立ち上がる「希望の原点」が息づいている。

 県労連の次なる一年は、この“希望の連鎖”をどこまで広げられるかにかかっている。